これから冷食製造するなら抑えておきたい基本的な知識

手軽で美味しい冷凍食品。

需要は増えていく一方である反面、消費者側としては「より美味しいもの」を求め続けてられています。

消費者目線の冷食製造を実現するために企業がおさえておきたい基礎知識をご紹介します。

目次

冷食製造の基本プロセス

冷凍食品を作るための過程では、5つの工程を踏まなければなりません。

こちらで確認していきましょう。

前処理

冷凍食品を作る上で第1段階となる前処理。

ここで食べられない部分を切り分けたり、除去します。

例を挙げると、魚の場合はウロコを取り、頭・内蔵・ヒレを取り除いて3枚におろすなどの下処理をします。

野菜の場合は、皮をむき、適当なサイズに切り分けることを指します。

食材の用途によっては、食感を残すために大きめに切っておくものもあります。

調理

冷凍食品の完成形に整えます。

例えば、唐揚げの冷凍食品を製造する場合は揚げておきます。

ハンバーグであれば形を整えたあと焼きます。

この後の工程で食品を冷凍するので、ここで最終調理して仕上げます。

冷却

加熱した食品を冷凍する前には、放熱してから冷却してあげます。

放熱させる理由は、温かいものを急に冷凍させようとすると、冷凍機に負荷がかかってしまうためです。

一般的には『チラー』と呼ばれる機械で冷まします。

(*チラーについては後述します。)

冷凍

熱が冷めたら、急速冷凍機で食品を冷凍します。

急速冷凍機とは、0℃からマイナス5℃までの『最大氷結晶生成温度帯』を30分以内に通過させる機械のことです。

急速冷凍機の特徴としては、従来の冷凍機と違い、食品を急速に冷凍することが可能になったため、食材内部の細胞を壊さずに冷凍できることです。

急速冷凍することで、品質を維持したままの味や鮮度、食感など食材の長期保存が実現できるようになりました。

保存

冷凍食品が出来上がったら、適切な包装を行い、出荷するまで冷凍庫に保存しましょう。

冷凍食品が出来上がったとしても、その後の工程で品質の変化が起こってしまうと出荷できません。

適切な包装をすることで、異物の混入や乾燥による品質変化を防ぎ、衛生状態を保ちましょう。

食品衛生法の規定ではマイナス15℃以下での保存が義務付けられており、「一般社団法人日本冷凍食品協会」の自主基準ではマイナス18℃以下の保存が定められています。

そのため、一般的にはマイナス18℃以下の冷凍庫で冷凍した食品を保存する必要があります。

店舗までの運搬

冷凍食品は、製造してから販売するまで首尾一貫して冷凍状態を保ち、流通させることが必須。

こうした仕組みのことを「コールドチェーン」と呼びます。

コールドチェーンをうまく機能させるには、製造・加工する施設からスーパーなどの店舗、倉庫などの保管場所における温度管理を徹底することは言わずと知れたことでしょう。

運搬する時のコンテナやトラックなどの温度を一定にして管理することが重要です。

冷却と冷凍の違いは?

冷却は熱いものを冷まして温度を下げることで、冷凍とは人工的に凍らせることをいいます。

先述したとおり、冷却してから冷凍しましょう。

企業にとって冷食製造の難しいポイント

設備の充実

冷凍食品を作るのには多くの設備が必要であり、設備を維持するためにはメンテナンスも必須です。

製造現場はこれからの時代、IT化が進み、ますますオートメーション化が進むと予測されています。時代についていくためにも設備を充実させることが重要でしょう。

適切な温度管理

冷凍食品を製造し販売するに至るまで、適切な温度管理をし、品質を維持しなければなりません。

低温を保ち続けるには冷凍庫の開け閉め頻度を下げるなどの工夫も必要でしょう。

従業員さんたちへの教育と相互の協力が大切ですね。

また、運搬する車両には温度記録計を搭載するとより安心です。

運搬ルートの迅速な確立

運搬する際には、主に「ルート配送」と呼ばれる指定地点へ指定時間に巡回する方法が多く採用されています。

運搬ルートが定まらないことには製造した冷凍食品を店舗に運ぶことができません。

突発的に配送する「スポット配送」の手配も確保できているとより安心でしょう。

在庫管理

どの商品がいくつ残っているか在庫管理することは大切です。

ロット管理して賞味期限・製造日などを把握できるようにしておきましょう。

バーコードを使った在庫管理システムが構築されていることが多く見受けられます。

需給バランスやシーズンによって変動することも考えられるので、長いスパンでのデータを取り、生産量を調整することも良いでしょう。

緊急時の対応

食品製造においてトラブルは切っても切り離せないもの。

設備トラブルで思ったように製造ができない。品質不良や異物が混入し、クレーム。

どれもしっかり管理することでフォローすることができます。

抜けがないように対応していても、一度はあるものなので、トラブルが発生した際にどう対応するかマニュアルを作成しておきましょう。

冷食製造に必要となる冷凍機の種類

冷凍機は数種類あり、それぞれ特徴があります。

それぞれ見ていきましょう。

蒸気圧縮冷凍機

メリット:熱効率が良いため、冷やすことに特化している。

デメリット:フロンなど環境破壊物質を使用している。

冷凍機の中で最もメジャーであり広く使われているのが「蒸気圧縮冷凍機」です。

冷媒にはフロン、CO2、アンモニアなどが使用されています。

一言でまとめると、「蒸発潜熱による気化熱を用いて冷却する設備」と言えるでしょう。

*蒸発潜熱とは ・・・ 液体が気体になるとき、周囲から熱を奪うこと。

【圧縮→凝縮→膨張→蒸発】の4つの構成となっており、これを『蒸気圧縮式冷凍サイクル』と呼びます。

①圧縮機

気体の冷媒を圧縮し、体積を小さくします。

体積を小さくすることにより、温度と圧力が上昇します。

②凝縮器

圧縮機で高温高圧になった気体状態の冷媒を凝縮器を通して冷却し、液体にします。

凝縮器を冷やす冷媒は大気でも水でもOKです。

③膨張弁

液体の冷媒を小さな孔経のプレートから噴出させ、圧力を下げます。

圧力を下げることにより温度も下がるため、凝縮器で完全に液化しなかったものをさらに液化させます。専門用語では、これを「フラッシュ」と呼びます。

これには「制限オリフィス」と呼ばれる機構が用いられることが多く、どんなに一次側の流れが多くても一定量以上は流れない構造になっています。

④蒸発器

熱々のスチームやガスなどで一気に熱をかけ、液体を気化させます。

こちらで気化させるときに蒸発潜熱が生まれ、気化熱によって冷えるので冷凍機として成立します。

吸収式冷凍機

メリット:蒸気圧縮冷凍機に比べ、低コスト。水を使用するので環境に優しい。

デメリット:蒸気圧縮冷凍機と比べ、熱効率は劣る。

吸収式冷凍機は冷媒に「臭化リチウム水溶液(LiBr)」という親水性のある物質が使用されます。

フロンや代替フロンは使用せず、冷媒には「水」を使っているため、環境にやさしい空調システムとなっています。

一言でまとめると『ビルなどの大きな施設を冷やすのに必要な冷水を作る機械』です。

【吸収→再生→凝縮→蒸発】の4つの構成となっており、『吸収式冷凍サイクル』と呼ばれます。

『蒸気圧縮式冷凍サイクル』との根本的な違いは2つあります。

①ポンプがあり、再生器・吸収器が使用されている。(圧縮機がない)

②冷媒以外にも『吸収液』が必要。

水は通常100℃で沸騰しますが、山頂など大気の圧力が低い状態では沸点が下がります。

これを利用して冷凍機の蒸発器内を真空にして圧力が低い状態を保ち、低い温度でも水を蒸発させることを可能にしています。

①吸収器

蒸発器で気化した水蒸気を吸収器へ送り、「臭化リチウム(吸収液)」に吸収され、ポンプにて再生器へ送られます。

②再生機

再生器内で臭化リチウムとの混合液を加熱することで分離させます。

吸収液は吸収器へ戻し、水蒸気は凝縮器へ送られます。

凝縮器で凝縮され、蒸発器へ送られた際に気化熱が発生し、冷やされるというサイクルになります。

臭化リチウムは沸点が「1265℃」とかなり高いため、水と容易に分離することができます。

ブライン冷凍機

メリット:凍結スピードが早い

デメリット:コストが高い(真空包装、後処理)

ブラインというアルコールを溶け込ませた溶液を冷媒としています。

液体は、気体の空気と比べて熱伝導率は約20倍大きいため、驚くほど早く冷凍することができます。

凍結スピードが早いため、食品の品質を維持したまま冷凍ができることは大きなアドバンテージになります。また、痛みやすい食材を冷凍するのには最適です。

ただし、個別に真空包装をしたあとに冷凍機にかけ、冷凍後にはアルコールを拭かなければならないため、それにかかるコストと手間が必要になります。

真空包装ができる製品に限られてくるのもデメリットとして挙げられます。

エアブラスト冷凍機

メリット:凍結スピードが早い

デメリット:冷凍ムラができる可能性がある

マイナス30℃〜マイナス40℃の低温の冷風で食品を凍結するため、一般の冷凍庫より早く冷凍することが可能です。

しかし、冷凍する際の配置によって冷凍ムラが起きやすいのも事実なので、品質にバラつきがでてしまうおそれがありますので、品質チェックを十分に行いましょう。

液化ガス冷凍機

メリット:急速冷凍で大量の製品を作れる

デメリット:ランニングコストが高い

超低温の液化ガスを吹き付けることで、前述した冷凍機より最も急速に冷凍することが可能です。

また、シンプル構造のためメンテナンスが非常に容易であることもメリットです。

しかし、定期的に液化ガスを補充しなければならないため、ランニングコストがかかることが大きなデメリットといえます。

また、超低温の液化ガスを吹き付けるため、食品にひび割れが発生するおそれもあります。

コンタクト冷凍庫

メリット:成形と凍結を同時に行える

デメリット:使用用途が限られる

金属製の冷却板(フラットタンク)の内部に超低温の冷却物質を流し、上下のフラットタンクでサンドイッチして食品冷凍します。

密着させて凍結させるため、効率良く凍結することができます。

しかし、フラットタンクで挟み込むので使用できる形状が限られます。

ハンバーグなど平たいものは効率よく使用できるでしょう。

企業の冷食製造に必須の専用設備

チラー

温度の低い水を作る設備のことを指します。「チラーユニット」「チリングユニット」とも呼ばれます。

冷やしたいものを冷媒によって冷やすと、冷媒の温度が上昇します。

冷媒側の温度を一定に保つためにチラーを使い、冷やしてあげましょう。

氷、送風機

食品の形や大きさ、生産個数によっては氷水の中に食品を入れて冷やしたり、風を当てて冷ましたり、常温で食品を冷ましたりしても構いません。

ただし、チラーを使わない場合は、細菌や微生物の増殖が懸念されますので食品の衛生管理に気をつけましょう。

温度計

急速冷凍機を使った急速冷凍を行う際には、食品が本当に急速冷凍できているか検証をしなければなりません。

食品の温度を計測する専用の温度計を導入しましょう。

冷凍中の食品の品温の変化を記録し、凍結曲線を確認する必要があります。

安価なものでは、温度指示計がありますが、確認したその時の温度しか示さないため経時変化が分かりづらいというデメリットがあります。

温度変化のデータを自動で記録し、データ解析ができる「データロガー機能」が付いているものが利便性が優れています。

真空包装機

密封したプラスチックフィルムなどを使ってぴったりと包装した後、フィルム内の空気を無くすことで包装の内部に真空状態を作り出す機械のことを指します。

真空状態で包装することにより、異物混入や品質悪化のリスクを回避できます。

冷凍機によく起きるトラブル

配線不良

設置不良やメンテナンスを行ったあとに起こり得るトラブルです。

配線のつなぎ間違いやアースが取れていないなど、原因をひとつずつ確認し、潰していきましょう。

停電

電気系統のトラブルで最も多いのは停電による冷凍機の停止です。

こちらに関しては電気の供給側の問題が多いかと思いますが、安定的な電力供給をバックアップするために発電機などを設置しておくとより安心でしょう。

低電圧

冷凍機を起動しても電圧が上がりきらず、本来の能力が出ないことがあります。

こちらに関しては原因の特定・メンテナンスをメーカーさんにお願いするのが一番良いかと思います。

原因不明の故障

突然止まった、起動しないなどの事象が発生した場合には、すぐメーカーに問い合わせましょう。

場合によっては無償で修理してくれることもあるので、放置せずすぐ相談しましょう。

冷凍機の適切なメンテナンス頻度は?

よく「壊れたらメンテナンスすればいいや」と定期メンテナンスを怠る方もいます。

しかし、機械も人間と同じでたまには栄養(油)をあげたり、調子を見てあげることも重要です。

ブレイクメンテではなく、1ヶ月おきなど定期的にメンテナンスを行いましょう。

たいていメーカー推奨のメンテナンス期間があるので確認しておくと良いです。

基本的な知識をきちんと抑えて冷食製造を行おう

こちらの記事では冷凍機の基礎知識をご紹介しました。

冷凍食品を製造する知識は日に日に新しくなりますので、最新情報にアップデートしましょう!

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この記事を書いた人

25歳、29歳で長男・次男が産まれ、父親なりに育児を勉強し、携わってきた経験をお伝えします。
本業とは別に、ボクシングのトレーナーをしています。
建築士の資格を持つ奥さんに影響され、建築を勉強中。
大人になって読書の楽しさに気付く。
「過去に学び、伝える」をモットーにしています。

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